ものみの塔誌2000年6月15日号は血液を使用した治療に新たな見解を示す

すでにこのウェブサイトや関連のサイトで何度もお伝えしたように、ものみの塔協会の血液に関する医療方針には多くの矛盾と問題点が含まれ、いずれ新たな見解が出てその矛盾の解消がはかられる可能性が期待されていました。今回6月15日号のものみの塔誌29-31頁の「読者からの質問」の欄には、血液製剤に関するものみの塔協会の新たな見解が発表されました。

この記事では、先ずこれまでの赤血球、白血球、血小板、血漿の四つの主要成分は絶対に拒否しなければならないこれまでの立場を確認しています。これまではものみの塔協会はこれらを「major components」と呼んできましたが、これらの四つの成分は今回「primary components」という呼び方に変えられています。日本語版ではこれは同じ「主要成分」という言葉で訳されていますが、英語ではこの二つの表現に重要な違いがあります。「major」とは量の面で主要なという意味がありますが、問題は白血球や血小板は量的に見て、協会が受け入れて構わないとしているアルブミンと比較すると遥かに少ない血液成分なのです。従って今までの「major」な成分は拒否し、「minor」な成分は受け付けるというルールでは、実際は「major」であるアルブミンを受け付けて「minor」である血小板や白血球を拒否するという方針が矛盾したものになっていました。これに対し「primary」という表現は順位の面で主要という意味があり、量としての大小には関係がなくなりました。もっとも日本語版のものみの塔誌は、ニューヨークの本部が出したこの英文の微妙な違いを訳し出していませんので、この違いは日本のエホバの証人には永久に伝わらないことになるでしょう。

それではなぜ、「primary components」という表現が重要になったのでしょう。この記事を読むと、それはこの四つの成分が量的な多さから拒否しなければならないのではなく、全血から最初に分画される成分、すなわち作られる順番として最初である、つまりプライマリーであるから拒否するという論理になっています。それは、それ以外の受け入れて構わない成分を定義する仕方からわかります。この記事では今回初めて、「primary components」から二次的に作られる成分は全て個人個人の聖書に基づいた良心の決断によって受け入れて構わないことになりました。これらの成分は血漿の分画の他、これまで禁じられていた血液細胞成分から取られた製剤も含まれています。これらの「primary components」から取られる成分は「secondary components」と呼ばれるべきですが、この記事ではその表現は使っていません。しかし、「major」の対照語が「minor」であるように「primary」の対照語が「secondary」である以上、これらの受け入れ可能な成分を「secondary components」と呼ぶのは妥当と言えるでしょう。

今回協会が全ての「secondary components」の受け入れを自由化したことで、エホバの証人の血液を使用した治療に幾つかの選択の道が開かれました。例えば、血漿、赤血球、血小板などの製剤の中には最初に全血から取り出された後、更に分画を繰り返したり処理が加えられる場合があります。これらは解釈によってはプライマリーではなくセカンダリーであると考えて受け付けることが可能かもしれません。今回の方針変更の最も大きな影響は、代用血液の開発に関係するでしょう。これまで多くの製薬会社が赤血球の一成分であるヘモグロビンを使った代用血液の開発と臨床応用を行って来ましたが、ものみの塔協会はこのヘモグロビンを使った代用血液をエホバの証人にとって使用不可能なものと決めてきました。今回、全ての「primary components」から作られた成分は受け入れられるという新たな方針は、赤血球の成分であるヘモグロビンを受け入れる道を開いたものと言えます。緊急大量出血に対しては死の他に道のなかったエホバの証人とっては、そのような緊急の治療に必要なヘモグロビンを使った代用血液の使用は大きな朗報になるでしょう。

しかし残念ながら、今回の方針変更はそれに伴う問題も引き起こすことになるでしょう。それは、ものみの塔協会が今回の方針変更でより多くの血液製剤の使用をエホバの証人に許しながら、その一方でエホバの証人の献血禁止に関して何の変更も示さなかったことです。言い換えれば、ものみの塔協会は世界中の600万人のエホバの証人に対しより多くの血液製剤を使う道を開きながら、他方で現在の献血に依存する血液製剤の供給に対してその材料となる血液の提供を禁止し続けることになり、世界の血液供給の慢性的な不足に拍車をかけることになるでしょう。エホバの証人が「真理を知らない世の人」と蔑んだ見方をするエホバの証人以外の人々から与えられる血液によってその命を永らえることになるという現実は、何とも皮肉としか言えません。このような倫理的・社会的に無責任な方針を一刻も早くものみの塔協会が是正することが期待されます。

(5-8-00)