社会で充実した生活を送る組織を離れた二世より―証人である母との関係について

(6-2-02)


村本さん、こんにちは。前回のメールを掲載してくださり、親切なコメントをあ
りがとうございます。今回は私と証人である母との関係についてお伝えしようと
思い、筆をとりました。

前回のメールでは私のエホバの証人としての経歴がありませんでしたね。私は16
のときにバプテスマを受けました。今から思えばやめておけばよかったのにと…。
しかし開拓奉仕は補助開拓さえもしたことがなく、それほど熱心な信者ではあり
ませんでした。

村本さんのご指摘どおり、組織を離れた私と母との関係は現在でもたいへん微妙
で難しいといえます。現時点でうまくいってると思っていてもいつなんどき議論
が始まって険悪ムードになってしまうかわかりません。

話し合い自体はお互いを尊重する上で必要だとは思いますが、ほんのひとことで
も関係がぎくしゃくする引き金になりかねないため、今も日々の言動にかなりの
気を遣っています。

母とは同居しているので、よくもわるくも毎日顔を合わせます。集会に参加する
回数が減ってきた時期には、たいへん居心地の悪い思いをしました。毎回集会に
行くよう言われることはもちろんのこと、「集会に行かない=人格を磨かない」
とみなされ、「あなたのような怠惰な人間と結婚する彼はかわいそうだ」とか
「あなたは彼を不幸にする」とか、ほかにもさんざんなことを言われました。

(ちなみに母は不信者との彼の結婚には賛成してくれており、彼のことをとても
気に入ってるようです。私が不信者と結婚することでこうむる批判には耐えるつ
もりだと言ってくれたので、そのことにはとても感謝しています。母は私に結婚
してもひきつづきエホバの証人でいるよう望んでいます。)

その言葉は一時の衝動で言ってしまったのだと思いたかったのですが、なんども
言ってたところをみるとどうもそうではなかったようで。しかし彼の存在と助言
も大きな支えになって、そう言われることは心外だときちんと反論しました。

しかしこうまで言われてしまったのは、私が離れてしまうことで母はひとりにな
ってしまうのが寂しかったことや、私のほうもいろいろと言い方がきつくて母を
傷つけていたことも原因なので、母だけが悪いわけではないのですが。母はもし
かしたら軽いうつ状態だったのかもしれません。

ただぎくしゃくしている間、家を出たらどんなに楽になるだろうと幾度も思いま
した。しかし私には健康上の問題があって一人暮らしをするだけの経済力がなく
結婚する準備もまだできていなかったので、事態を打開するにはとにもかくにも
母との関係を修復するしかありませんでした。しかしそれがかえってよかったの
だと思います。もし私が家を出ていたら、断絶状態になっていたことも予想され
ますので。

どうしたらいいかよくわかりませんでしたが、手当たり次第いろんなことをしま
した。まず話し合いで母の思いをできるだけ多く吐きださせ、そのあとで自分の
気持ちを少しずつ機会を見はからって言うようにしました。もともと私が小さい
ころから聖書や組織についての疑問を話し合っていたので、それに関連付けると
よい反応(?)が返ってきたように思います。

またそれまであまりやらなかった家事を大幅に引き受けて、料理を勉強し、自分
は彼と結婚して一生懸命生きていきたいのだという意思を伝えるようにしました。
(それまでなにもしなかったのがお恥ずかしい限りです…)これがかなり好印象
だったようで、私が家事をやるようになってから、あまりいろいろと言わなくな
ってきました。(でも最近はあまりやっていませんが…)また私が仕事を始めて
充実した毎日を送っているのを見て、少し安心したようです。

なんだかものみの塔やその他出版物の提案にあった、未信者の理解を得る対策に
似たところがありますね。相手の考えを引き出してそれを用いて説明する、日頃
の行いをよくする、喜びにあふれた様子を見せるなどなど。皮肉といえば皮肉で
すが…。

母とは引き続きコミュニケーションをとり、村本さんのご提案どおり、折りに触
れて質問を投げかけていこうと思っています。まだまだすべてを理解してくれた
はずはないので、前途多難と言えます。しかし母自身も離れた子供と断絶するの
は不本意なはずですから、会衆との断絶や排斥などにはならないよう、言動には
用心していくつもりです。さらに、結婚する前に会衆と徐々に距離を置いたこと
で、母への風当たりが少しでも緩和されることを願っています。

幾人もの友人に聞いてみたところ、エホバの証人であるかどうかにかかわらず、
どの親子も多かれ少なかれ対立したりぎくしゃくしたりするようなので、これも
とかく一般的な親子関係の一例なのでしょうね。ただ組織からの断絶・排斥がな
ければのことですが。そう考えると、この組織の措置は確かにあってはならない
ものですね。大罪を犯すのではなくしっかりと自分の人生を歩むのにもかかわら
ず、家族に一生の痛みを負わせるというのは本当に大きな問題です。このことも
母に投げかけていきたいと思っています。

同じような境遇の方々に、少しでも参考にしていただければ幸いです。私も読者
の広場を読んで、皆様がそれぞれ懸命にがんばっておられる様子に勇気付けられ
ています。

それでは、これからも仕事にサイト運営にがんばってください。

《編集者より》
他の方々にもお勧めしていますが、あなたのおっしゃるように排斥と断絶を出来るだけ避けることにより、悲劇的な家庭の崩壊は防げると思います。夫婦関係もそうですが、親子関係もエホバの証人の問題が関係しなくても難しい問題はいくらでもあります。あなたの場合、あなたのお母様もあなたに似て、エホバの証人としては比較的柔軟な物の見方が出来る方で、それがうまく行っている大きな要因ではないでしょうか。確かに完全ではないでしょうが、それでも何とかよい親子関係を保ちつづけていられるようで、他の方々へのよい参考になると思います。ありがとうございました。


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