エホバの証人の輸血拒否による死で、加害者は殺人罪に問われるか−カリフォルニア州の判決

1998年3月7日、エホバの証人であるラッセルさんは二人の子供と警察官とともに、その前に起きた小さな追突事故のために彼女の車を路肩にとめて立っていました。その時、酔っ払い運転をしていたキース・クックがラッセルさんらの車に衝突、ラッセルさんは重傷を負い、近くの病院の救急センターに運ばれました。ラッセルさんがまだ意識があるうちに先ず最初に言ったことは、「輸血をしないで!」という言葉で、救急士や医師たちは少なくとも10回はラッセルさんがこの言葉を繰り返すのを聞きました。またラッセルさんの意識がもうろうとしてきた時でも、必死で起き上がり静脈注射の管を引き抜こうとしたそうです。こうしてラッセルさんは大量の出血ショックのうちに死亡しました。

今回カリフォルニア州の裁判所で問題になっていたのは、この事件で加害者のキース・クックは殺人罪に問われるのか、それともラッセルさんの死は彼女の輸血拒否によりもたらされたもので、クックはより刑の軽い罪に問われるべきか、という問題でした。キースの弁護人は、「宗教的な理由で輸血を拒否して死ぬのは確かにその人の自由かもしれない。しかしその結果によって他人が責任を負わなければならなくなるのなら、それは別問題だ」と語っていました。医師たちの証言では、ラッセルさんはまだ意識があるうちに、輸血を拒否すれば死ぬことは確実であることを理解しており、そのうえで「私の行く時がきた、私を行かせて下さい」と答えたといい、自分で死を選択していた可能性を示唆していました。一方検察側は、キースがすでに酔払い運転の前歴を持ち、当日も友人の制止を振り切って運転していたことから、殺意を持った殺人罪を適用すべきであるとしていました。

1998年12月15日に出されたカリフォルニア州ポモナの裁判所の判決によると、キースは酔っ払い運転で人を死なせた場合に普通適用される殺人罪ではなく、より刑が軽く、普通の交通事故死に適用される過失致死の罪が下されました。すなわち、キースにはラッセルさんを含む4人を傷つけた罪はあるが、ラッセルさんの死そのものには責任はないという判断でした。刑の重さの判決は1999年2月に出る予定ですが、死そのものが被害者の責任であったとしても、キースはその前歴からして殺人罪とほぼ同じだけの刑、すなわち懲役15年から無期懲役の刑を言い渡されるであろうと言われています。

この事件は、エホバの証人の輸血拒否が単に本人の宗教上の自由の問題ではすまないことを浮き彫りにしています。このような加害者の罪の問題の他、医師の過失の判断の問題、生命保険の問題、医療保険の負担の問題など、輸血拒否がもたらす多くの社会問題を認識する必要があるでしょう。

(12-25-98)