エホバの証人はヘモグロビンを使った代用血液の使用に踏み切る

以前のニュースでお知らせしたように、本年6月、ものみの塔協会は協会が「主要成分」であると指定した分画以外の全ての血液分画の使用を個人の良心の問題として受け入れることを認めました。(ものみの塔誌2000年6月15日号は血液を使用した治療に新たな見解を示す)医学的に見てこの方針の変更で最も大きな影響がでるのはヘモグロビンを使用した代用血液の使用ですが、ものみの塔誌の記事はこの件については沈黙を守っていました。しかし、ものみの塔協会の医療機関情報サービスのベイリーと有賀の二人は1998年にアメリカの医学雑誌に投稿し、赤血球の主要成分であるヘモグロビンを使った代用血液は、人血からでも動物血から採ったものでも、エホバの証人は受け付けないという見解を、医学界に対して公式に言明してきました。(Bailey R, Ariga T. The view of Jehovah's Witnesses on blood substitutes. Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol 1998;26:571-576.)従ってたった二年も経たないうちにそのような重要な変更が目まぐるしく行われるかを疑問視する見方も出ていました。

9月24日のアメリカ・カリフォルニア州・サクラメント市の新聞サクラメント・ビーは、一人のエホバの証人研究生が、医療機関連絡委員会の正式の了承の元に、牛の血液のヘモグロビンから作られた代用血液を受けいれて、それによって命拾いをしたことを報道しています。この記事によると、サクラメント市に住む34才のホゼ・オルドゥノ氏は自転車で出勤途中にひき逃げ事故にあい、幾つかの骨折と内臓への損傷により、胸腔内に大量の出血をしている状態で病院に運ばれました。外科医は直に輸血を指示し、オルドゥノ氏は二単位の輸血を受けた所で目を覚まし、それ以上の輸血を拒否することを言明しました。この時点で輸血は中止され、外科医は手術を断念せざるを得ませんでした。医師団はエホバの証人医療機関連絡委員会のグレゴリー・ブラウン氏と連絡を取りながら輸血以外の方法で貧血を改善して手術に持ち込む努力をしましたが、オルドゥノ氏は貧血に伴う心不全の兆候を示し、命が危ぶまれる状態に達しました。医師団は最後の手段として、マサチューセッツ州ケンブリッジのバイオピュア社が開発中の代用血液ヘモピュアの使用を検討しました。エホバの証人医療機関連絡委員会のブラウン氏は、ヘモピュアが、ものみの塔協会が使用すべきでないと決めた血液製剤でないことを確認して、正式に医師団にその使用を了承しました。バイオピュア社はFDA(米国食品医薬品局)の特別許可を得て、直にヘモピュアを提供し、これによりオルドゥノ氏は手術を受けて損傷を修復し、退院することが出来ました。新聞報道によると、この結果は医者やエホバの証人でない家族にとって喜ばしいことでしたが、ブラウン氏を始めとする患者を支援してきたエホバの証人たちにとっても大きな喜びであったそうです。なおサクラメント・ビーの英文新聞記事はこのウェブページで読むことができます。

ヘモピュアは牛の赤血球を使用してヘモグロビンを精製処理して赤血球の代用として酸素の運搬をさせるために開発されたものです。この使用がエホバの証人に対して正式に認められたことは限りない朗報と言えるでしょう。バイオピュア社はこれを早くて来年にはFDAの正式の許可の元に一般の使用に踏み切る予定で、これにより多くのエホバの証人が失血死から救われることでしょう。ものみの塔協会を代表する医療機関連絡委員会がこの決定に関与していることは、これが単なる一症例の問題でなく、エホバの証人全体に原則として当てはめられるルールとなることを示しています。改革派エホバの証人が直接バイオピュア社に問い合わせた所、ヘモピュアはすでにかなりの数のエホバの証人に使用されており、その都度ものみの塔協会の代表者はこれを「血液分画」であるとの理由で許しているとの話でした。

しかしその一方で、二年も経たないうちにこのような生死を左右する大きな方針の変更が行われた背景を考えると、幾つかの大きな問題が残ります。ヘモグロビンはものみの塔協会の代表者も書いたように、赤血球の主要成分です。血液の最も重要な機能である酸素運搬能力はこのヘモグロビンの作用であり、血液が赤い液体に見えるのもまたヘモグロビンの色によります。ヘモグロビンは血液が血液として機能し血液として認識されるどこから見ても主要成分です。肉眼には見えない白血球や血小板と比べれば比較にならないほど主要なはずです。ものみの塔協会がヘモグロビンのような主要成分の使用を許可し、それ以外の主要血液成分の使用を禁止している根拠はますます希薄になってきたと言わざるを得ないでしょう。

ものみの塔協会は輸血拒否の理由として、繰り返し聖書の中でエホバが動物の血は地に流して処分することを命じ、貯蔵したり体内に取り入れることを禁止していることを取り上げました。今回、大量の牛の血液を貯蔵してその主要成分を体内に取り入れることを協会が正式に許したことは、この教義の矛盾をますます白日の下にさらけ出すことになるでしょう。もう一つの問題は、このような救命の為の治療がエホバの証人にとって使用可能になったことをものみの塔協会は公式に一般のエホバの証人に通知しないことです。これについてバイオピュア社の代表者は、ものみの塔はどうもこの件を報道機関が取り上げることを避けているようだと語っていたと言われます。このような人の命を直に左右する方針変更を「内々に」すませようとするものみの塔協会の姑息な姿勢は、特に改革派エホバの証人の怒りを買っています。このような情報を知らずに死んでいくエホバの証人がいたとしたら、ものみの塔協会の「血の罪」の責任はまぬかれられないでしょう。

この編集者は日本における代用血液の使用がどの程度進んでいるのか知りませんが、世界のエホバの証人が死に至る大量出血に際しても、生き延びる道が開かれつつあることを知ることは非常に重要と考えます。このニュースを知り合いのエホバの証人の方々に一刻も早く広範に伝えられることをお願い申し上げます。

(9-30-00)