輸血自由化問題で、ヨーロッパのエホバの証人の内部に混乱状態

本年四月にヨーロッパ人権擁護委員会でブルガリア政府との間に取り交わされた調停により、ヨーロッパのエホバの証人は輸血を「自由選択」でき、それに対して協会は「統制や処罰は行わない」と約束しましたが、この新しい展開に関して、ヨーロッパのエホバの証人は協会から正式の釈明もないまま、混乱に近い状態に陥っています。この混乱は、ヨーロッパの報道機関がこの問題を次々に取り上げるのに対し、ものみの塔協会が沈黙を続けるために、ますます拍車をかけているようです。

これまでの所、エホバの証人の間では、このブルガリアとの調停に関して数多くの解釈が出ています。最も多い態度は、協会が正式の釈明を出すまでは無視を決め込むという態度ですが、その次に多いのは、「輸血拒否は今までも自由選択だったのだから、何も変わっていない」という、開き直りです。これはイギリスのものみの塔協会の代表がBBCと行ったインタビューに現れています。それによれば、「エホバの証人が輸血を拒否するのは組織の決まりだ。それでも輸血を受けるのは自由だが、決まりを破ったのだからその組織から出るのは当たり前だ」という態度です。もう一つよくエホバの証人の間で行われている説明は、「私たちは輸血を受けた人を直ぐに排斥はしないのだから、ブルガリア政府との約束は嘘ではない。審理委員会で悔い改めをしない人に限り排斥されるのだから、これは輸血を受けたことによる処罰ではない」というものです。

しかし少なくともスウェーデンとデンマークのエホバの証人に間では違った解釈が行われています。7月16日付けのスウェーデンの新聞、Helsingborgs Dagbladは、ものみの塔協会スウェーデン支部の広報担当秘書が、方針の明らかな変更を認め、今後は輸血を受けるエホバの証人は排斥処分にされることはない、と語ったことを伝えています。この記事はこのウェブページで読めますが、残念ながらスウェーデン語だけで書かれています。この報道を確認するように、スウェーデンのエホバの証人たちの何人かが、その集会の中で組織が輸血拒否に関して新しい方針を打ち出したことを聞いたそうです。また、別のスウェーデンの新聞は、デンマークのものみの塔協会支部の代表が同じような発表をしたことを伝えています。

このように、最近のエホバの証人はヨーロッパにおいては、全く統一が取れておらず、この混乱状態がどのように進展するのかは、今の所わかりません。エホバの証人が、この輸血問題を機会に分裂をするのではないか、という危惧を抱く関係者まで出ています。

幸か不幸か日本のエホバの証人はこの間、全くこの問題に関して知らされていませんが、「世界で一致している」を誇りとするエホバの証人のことですから、いずれこの混乱状態に巻き込まれることになる可能性は十分あります。人命を左右するような重大な輸血拒否の教義が、このように各地でばらばらであっては、世界規模の宗教としてまとまりがつかず、このまま放置すれば、ある国のエホバの証人は輸血を拒否して死んでいくのに対し、別の国のエホバの証人は堂々と輸血を受けてしかも立派なエホバの証人としてやっていける、という笑い事ではすまない悲惨な状況が来ることでしょう。

ニューヨーク・ブルックリンの本部はこの事態を認識して、現在打開策を検討している所と言われています。どのような結論が出されるかは分かりませんが、近い将来、輸血拒否に関しての「新しい光」が組織から提示されることは時間の問題のようです。

(7/30/98)