カナダの16歳少女輸血拒否裁判のその後

前回のニュースでお知らせしたカナダ・カルガリ市の16歳のエホバの証人による輸血拒否裁判のその後ですが、ものみの塔協会側が調停を申し込んだことで、輸血による治療は続行されました。しかし、医師団はその後の治療の反応から、化学療法による完全緩快(一時的にでも白血病細胞を完全に取り除くこと)導入は不可能との判断を下し、約二週間前に輸血を含む治療を終了しました。その後、この少女は退院して帰宅できました。新聞報道によりますと、少女は記者に対して、とてもいい気分であり退院できたことを喜んでいると、元気そうに話したそうです。

白血病の治療では、完全緩快に成功しなかった場合、再発は必至ですが、それが何時来るかわかりません。元々の病気が非常に悪性なものであるために、根治することは不可能であり、医師団はこれ以上輸血を含む根治をめざす侵襲的な治療を続けても、少女に対する苦痛を増やすだけと判断したようです。しかし、もし輸血を含む治療を全く受けなかったとしたら、この少女は2月の時点で死亡していたはずであり、少なくともここまで命を永らえたことは、治療のある程度の効果と言っていいでしょう。

今後この少女が何ヶ月、あるいは何年生きられるかわかりませんが、白血病が完治できなかったことは悲しい結末でした。しかし短期間でもこの少女が生きる喜びを味わえれば、それはそれで意味のある裁判であり、有効な治療であったと言えるのではないでしょうか。

なお、カナダ最高裁判所は、ものみの塔協会から出されていたこの件に関する審査請求を正式に却下しました。しかし過去の例から見ると、ものみの塔協会がこれでおさまることは可能性が薄く、患者の意志に反した輸血を人権侵害事件として新たな裁判を起こして徹底的な裁判闘争に出てくる可能性は否定できません。

(7-27-02)


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