輸血解禁の第一段階か?

ものみの塔協会、ブルガリア政府と調停に合意
エホバの証人が輸血を受けるか受けないかは自由選択であり、
協会は統制や処罰は行わないと約束する

いよいよ「血の教義」の変更が現実味を帯びて来ました。研究すればするほど矛盾に満ちて一貫性のないことが明らかな「血の教義」は、世界中の反ものみの塔勢力により、批判されてきましたが、この教義の内容が余りにもお粗末なため、その変更は時間の問題であろうという観測が流れて来ました。

《事実経過》

1月22日のニュースで詳しく紹介したように、ものみの塔協会はヨーロッパ人権委員会へ提出した提訴の中で、協会は「輸血を受けることを選ぶエホバの証人に対しては宗教的制裁措置は行われない」という、明らかにこれまでのものみの塔協会の輸血に対する方針とは異なる表現を使っていました。このような矛盾した言明をブルガリア政府に対して行った協会の真の理由は不明でしたが、今回、ヨーロッパ人権擁護委員会の発表によりますと、ものみの塔協会は、この立場を正式な調停として名文化した模様です。

ここにヨーロッパ人権擁護委員会の発表した内容で、エホバの証人に関係する部分をそのまま転載します。この文書の全文はヨーロッパ人権擁護委員会のウェブサイトで読むことができます。ここをクリックして下さい。


II. Reports adopted

(i) Reports adopted under Article 28 para. 2 of the Convention (friendly settlement)

(a) One Report was adopted by the plenary Commission under Article 28 para. 2 of the Convention, concluding that a friendly settlement had been secured:

- KHRISTIANSKO SDRUZHENIE "SVIDETELI NA IEHOVA" (CHRISTIAN ASSOCIATION JEHOVAH'S WITNESSES) v.Bulgaria (Application No. 28626/95)
The case concerned the refusal to re-register the applicant association pursuant to a 1994 law, and the alleged suppression of its activities and those of its members. In settlement, the Government agreed to introduce legislation as soon as possible to provide for civilian service for conscientious objectors, as an alternative to military service, and to register the applicant association as a religion. The applicant undertook with regard to its stance on blood transfusions to draft a statement for inclusion in its statute providing that members should have free choice in the matter for themselves and their children, without any control or sanction on the part of the association.


法律文書なので一般の英語と異なった語彙や表現が使われているので内容が把握しにくいかもしれませんが、太字の最も重要な部分を和訳すると次のようになります。

申請者(ブルガリアのエホバの証人の団体を指す)は輸血に対する立場に関して、メンバー(各エホバの証人のこと)が本人やその子供たちがこの件に関して、協会の統制や処罰なしに(without any control or sanction)自由な選択(free choice)が行えるようにする規則を含む声明を発表した。

1月22日のニュースにも述べたように、ものみの塔協会はブルガリア政府に対し、エホバの証人を合法的な宗教として登録させるようにヨーロッパ人権擁護委員会に提訴していましたが、その中で争点となったのが徴兵拒否と輸血の禁止でした。この人権擁護委員会の報告を読むと、ブルガリア政府はエホバの証人に対して非戦闘民間代替業務を提供すること、そしてものみの塔協会側は、輸血禁止を「自由選択」「無処罰、無制裁」にすることで、双方歩み寄り、調停に達した模様です。

《解説》

ものみの塔のブルガリア政府に対するこの約束は、エホバの証人の宗教の歴史の中で画期的なものでしょう。これまではエホバの証人の中で、輸血や、禁じられている血液成分の治療を受けて「悔い改めない」者は、排斥処分を受けて、不道徳な行為で排斥された信者と同じような制裁処置を受けてきたからです。この方針は1961年1月15日号(英文版)のものみの塔誌の記事以来、過去37年間にわたり世界的に例外なく適用されてきました。今回のこの調停は、このものみの塔協会の根幹とも言える、この方針の変更といえるでしょう。

今後、ものみの塔協会が世界500万人のエホバの証人にどのような「新しい光」をものみの塔誌の上で発表するかが注目されますが、遅かれ早かれこの方針は世界中に適応され、全てのエホバの証人が輸血は「無処罰、無制裁」で「自由選択」として決定できると教えられることは、まず確実であろうと考えられます。エホバの証人の誇りであり大原則である、「世界中で一致して神のご意志を行なうエホバの証人」(ブロシュアーの題名)から考えると、エホバの証人のこのように重要な教義が、ブルガリア人のエホバの証人だけ例外として別の適用の仕方が行われるということは有り得ないことだからです。

しかし残された問題はまだ山積しています。今回始ったであろう、輸血解禁の動きが世界中のエホバの証人に行き渡るまでには、まだかなりの時間がかかるであろうということです。それまでの間、ブルガリアのエホバの証人は「協会が自由選択と言うのだから、やむを得ない場合には輸血も許される」と解釈して、交通事故による大量出血を輸血により生き延びることができる一方、隣のルーマニアではそのような動きを全く知らされていないエホバの証人が、以前同様、命を落としてでも輸血は拒否しなければいけないと信じて、同じような交通事故の大量出血で無駄な死を繰り返していくことでしょう。同じような矛盾が、血友病に対する凝固因子の解禁の方針変更の際にもあり、同じエホバの証人でありながらある信者は、協会が方針を変更した後でも無駄な死を続けていたのでした。

エホバの証人が真に「世界中で一致して神のご意志を行なうエホバの証人」であるなら、今すぐに世界中で一斉に輸血を、「無処罰、無制裁」で「自由選択」として決定できると教えるべきではないでしょうか。

(4/22/98)


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