エホバの証人会衆内での児童性的虐待問題の更なる拡大

昨年八月のこのニュースの欄の「イギリス報道陣の批判にさらされるエホバの証人の児童性的虐待者(Pedophile)」と、それに関連した「エホバの証人の世界に蔓延する児童の性的虐待事件(Child Sexual Abuse)」の記事で紹介したように、エホバの証人の各地の会衆に蔓延する児童性的虐待問題は深刻化していますが、昨年12月以来、今度はアメリカの報道機関でこの問題が大きく取り上げられています。まず、アメリカ・ケンタッキー州ではこの件に関して長老の辞任が明るみにでました。この問題はアソシエイテッド・プレス(AP)とケンタッキー州の新聞ペドゥーカ・サン紙で繰り返し報道されてきましたが、ここに一連の記事をまとめて、ここまでのいきさつを紹介します。

アメリカ・ケンタッキー州、ドラフェンビル会衆のウィリアム・ボウエン氏、43歳、は過去二十年以上にわたってエホバの証人の長老と主宰監督を勤めてきましたが、昨年12月、自発的にこれらの職を辞任し、ものみの塔協会の児童性的虐待問題の内部腐敗を告発する動きに出ました。APの報道によりますと、ボウエン氏はその辞任の手紙の中で、ものみの塔協会が内部の性的虐待事件を秘密裏に処理させる方針をとっていること、ものみの塔の組織が自分たちの組織のプライドと外聞を保つこと第一にする余り、事件を警察に通報することなく穏便に処理させていること、そのために犯罪者が組織の内部に残り役職についている場合もあり、被害者の特に女性たちは泣き寝入りの苦しみをしのばなければならないこと、などを告発しています。ボウエン氏はエホバの証人の家庭に育ち、このような公の告発にでることが彼の家族との断絶になることを十分覚悟していましたが、会衆内での繰り返される性的虐待事件をまのあたりにし、これ以上の被害を食い止めるために告発に踏み切ったと語っています。

これに対し、ものみの塔協会のスポークスマンはAPの取材に対し、協会は警察への通報を禁止した事実はない、とボウエン氏の告発を真っ向から否定しています。その後ボウエン氏は、ものみの塔協会が組織内の機密の手紙として性的虐待事件をどのように処理すべきかを詳細に指示するために、1989年以来何度かにわたって長老たちに送った手紙を公開し、彼の告発がものみの塔協会の本部の指示によるものであることを裏付けています。またこれをきっかけとしてアメリカ各地から、現役や元の長老たちが次々に自分たちも同じ問題で苦しんでいるという発言をしています。驚くことに各地のほとんどの長老が一人で少なくとも数件の性的虐待事件を秘密裏に処理してきたことが明るみに出て、この問題がいかに広範で根が深いかを示しています。

一方、アメリカ・ニューハンプシャー州のナシュアでも、昨年12月以来エホバの証人の性犯罪が新聞で大きく取り上げられています。ナシュアの新聞テレグラム紙によりますと、グレゴリ−・ブラックストーンはロッキンガム県の最高裁判所で四人の会衆の少女に性的暴行を加えたことで懲役刑が言い渡されましたが、ここでも問題になったのは、会衆の長老の態度でした。ブラックストーンは1989年から1996年にわたって繰り返し犯行を重ねており、彼はそのことを会衆の長老に告白し、会衆の審理委員会の長老たちは少女たちの母親に事実確認の調査をした後、ブラックストーンを排斥処分にしましたが、長老たちはその事実を警察に通報しませんでした。事件の全容を知りながら警察への通報を怠ったことで、長老たちの責任が問題になっていますが、ここでもものみの塔協会の弁護士が「信教の自由」と「宗教上の告白の秘密」を盾にして、現在のものみの塔協会の方針を擁護しています。興味あることは、ものみの塔協会が常日頃、会衆の長老はそれによって生活を立てているのではないので「僧職者」の範疇には入らないことを主張してきましたが、今回のこの件ではその議論を180度転換させ、長老は「僧職者」としての秘密保持の権利と義務があると言い出したことです。

ケンタッキー州のボウエン氏については、この記事を書いている時点では、彼はいまだに排斥処分を受けていません。ボウエン氏は公けに組織を批判し告発したわけですが、その内容は正義と法律に裏打ちされており、組織を批判したこと以外には彼には何の罪もありません。このような内部批判者に対し、ものみの塔協会がどのような対処の仕方をするか、今アメリカのエホバの証人関係者は注目しています。ボウエン氏の処分の仕方によっては、今後も内部告発者が相次ぐ可能性があるからです。

(1-29-01)