ものみの塔協会、ヨーロッパ人権擁護委員会に対し、「輸血を受けることを選ぶエホバの証人に対しては宗教的制裁措置を加えない」と述べる

旧共産国であるブルガリア政府は、最近ものみの塔協会(地元での団体名はChristian Association Jehovah's Witnesses)の、エホバの証人を公認の宗教団体として登録する申請を退けました。このため、ものみの塔協会は、ヨーロッパ人権擁護委員会に対して提訴し、ブルガリア政府に対してエホバの証人を公認の宗教団体として登録するように訴えました。ブルガリア政府は、エホバの証人の登録を拒否する理由として、彼らの宗教活動のいくつかの問題点、たとえば子供の教育に対する影響、「神の法」の前には違法行為もする可能性のあること、兵役拒否などを上げていますが、その中で、輸血禁止の教義にもふれ、生命を尊重しない教義であり、公衆の健康と安全を損なう恐れがある宗教であるとしています。

これに対し、ものみの塔協会の提出したヨーロッパ人権委員会への提訴では、協会は「輸血を受けることを選ぶエホバの証人に対しては宗教的制裁措置は行われない、したがって、輸血に反対する教義が『公衆の健康』に対する脅威となるということはありえない」と訴えています。

このものみの塔協会の訴えは明らかに、その実態を反映していません。現時点では、エホバの証人で、公然と悔い改めること無く輸血を受けた者は、例外なく排斥処分を受けます。輸血が許される例外は、本人が意識不明のうちに自分の意志に反して輸血が行われた場合に、本人がそれを悔い改めた場合のみです。したがって、上記の人権委員会への訴えには明らかに事実と反する内容が見られます。

なぜ、ものみの塔協会がこのような事実と反する訴えを提出したのかは謎です。ただいくつかの可能性は考えられます。その一つは、そしてこれは最も高い可能性ですが、ものみの塔協会がその目的を達成するためには嘘をつくこともためらわないという事実です。これはエホバの証人の用語で「神権的戦略」(theocratic war strategy)と呼ばれ、このような大義名分の元には嘘も嘘とはよばれないのです。過去において、ものみの塔協会はヒットラーやチェコの政府に対して、この「神権的戦略」を使用して自分たちの宗教活動を公認させる働きかけをした歴史があるのです。このことから考えると、今回も彼らはこの「神権的戦略」という名の「嘘」を、ヨーロッパ人権委員会に対して使っている可能性が高いと考えられます。

もう一つの可能性は、これはより低い可能性ですが、ものみの塔協会はこれを機会に、輸血禁止の教義をなし崩しにしていこうという姿勢を見せているのかもしれません。最近、協会幹部は、世論の輸血禁止の教義に対する批判を和らげるために、「輸血拒否は個人個人で決める問題である」との発言を非公式に行っています。したがって、一部に予想されている、近い将来の輸血拒否の教義の変更に対する伏線として、このような訴えを行っている可能性は考えられます。

この事実は、まず第一に、われわれがヨーロッパ人権委員会に対しても、エホバの証人に関する正しい情報と提供する必要のあることを示しています。また、この事実が、今後これから来ると一部で予想されている、輸血拒否の教義の変更に本当につながるものかどうかも、注目していく必要があります。

なお、エホバの証人側と、ブルガリア政府側の、人権擁護委員会に提出した言い分は、その全文をフランスからだされている、このヨーロッパ人権委員会(European Commission of Human Rights)のウェブサイトで読むことが出来ます(英語です)。

(1/22/98)


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