「もしもあの時、聞かなければ」

(6-13-03)


はじめまして。私はバプテスマを受けて10年ほどになる1世女性です。
現在はエホバの証人としての活動は一切しておりません。
排斥や断絶の措置は受けていませんので、自然消滅というところでしょうか。

研究をはじめたきっかけは、中学時代の同級生からの非公式の証言でした。
当時はノストラダムスの大予言や、年齢的に人生とは何ぞや?などと
いうことを考え始める時期でもあり、聖書にはすべての解決策と
人生の意義や信頼できる予言が書かれているというので、
研究を始めることに同意しました。

ほとんどの若い1世の方は早い進歩をとげて兄弟姉妹と
なられるようですが、私はどうしても踏み切れませんでした。
パートではなくフルタイムの仕事を行い、一般の方々と多く触れ合う中で、
どうしてもそれらの方々がハルマゲドンで滅ぼされるということが
受け入れられなかったことと、バプテスマを受けてしまえば
開拓奉仕をするようにという圧力が今以上に大きくなることは
目に見えていましたから。
パートの仕事で食べていくのは、私には無理だと思いました。
体力的なことや、経済面も一応考えました。時給なども調べました。
結果、パートでは無理、食べていけないし、体力もない私は体を壊すかもしれない、
であれば、このままフルタイムの仕事を続けていこうと考えました。

しかし、司会者からの脅迫ともとれる発言を何度も聞かされることで、
それに負けてとうとう浸礼を受けてしまいました。
(その時の司会者は最初に私にエホバのことを伝えた人とは違います)

村本さんもエホバの証人と精神疾患について考察なさっておられますが、
私も鬱病を患い(浸礼後です)せっかくの安定した仕事も失いました。
鬱が始まった発端は「開拓奉仕は喜び、伝道は楽しい」
「エホバのおきてを守ることは喜び」
このような事柄をどうしても感じることができませんでした。
特に伝道活動は苦痛以外のなにものでもなく、
自分がエホバの証人であることも、職場等で明らかにしたことなどありません。
集会では「私を恥じる者はその者を恥じる」
「しりごみする者は喜ばれない」などと励まされます。
私は自分がエホバの証人であることを「恥じて」おり、
「しりごみして」いました。
自分は神からも認められないおかしな証人なのではないか、
姉妹失格なのだろう、なんてダメな人間なんだろう。
日々自分を責める毎日でした。
そうこうするうち、仕事もまともにこなせなくなり、自殺願望で
いっぱいになり、未遂もしました。
もう、どうでもよかったんです。
どうせハルマゲドンで滅ぼされるんでしょ、じゃあ、もういい。
気力もなく、世に戻る力もありませんでした。

仕事を休んで少し回復し、もう一度頑張ってみようかという気になりましたが、
会衆内の人間味のなさに失望し、まだ精神科の薬を飲み続けなければ
安定した生活が送れない、仕事にも行けない私に対して
「開拓奉仕をすれば鬱病なんてよくなるわよ」という無神経な言葉が
かけられ、もうこの組織にはいたくないという決心を日々強めていきました。
ある2世の若い姉妹の非常識さにも呆れました。
2世の方々の全部がそうだとは思いません。
しかし、この発言は衝撃的でした。
「私の友達がさあ、強姦されて妊娠したのよ〜(以下略)」
大声で、それも私は彼女の友達(現役姉妹)とは面識がないのに。
女性として最も屈辱的な犯罪に巻き込まれたことに
何も感じないのです。見ず知らずの方でさえ、そのような目に遭われたと
聞くなら心が痛みます。
ましてや友だちが被害者になったのなら、怒りと悔しさと悲しみで
いっぱいになるのではないでしょうか。
それを大声で、誰にでもふれまわるなんて。
これが、会衆で寵愛されている人の姿。
私はその事件には関係ありませんでしたが、彼女の発言を聞いて
怒りと情けなさで体が震えてきました。
この子、何考えてるの?普通の感覚はないの?感情はないの?
そこで何か言い返しても「だって姉妹は集会来てないじゃない、
奉仕も来ないでしょう、そんな人はダメよ」と言われるのがオチだと
分かっていたので敢えて何も反論しませんでした。

当時住んでいた地方は田舎で、道などで現役の方にばったりお会いすることが
多く、これは精神衛生上よくないと思い、
心機一転を図って新しい土地に移転しました。

それでもこのようなサイトをお読みする前はやはり滅びの恐怖に
取り付かれていました。
NGOのことも何も知らず、滅ぼされるとしても、その日まで
精一杯生きていこう、今私が生きているという事実は誰も消せないんだ、
そうやって一日一日を恐怖と戦いながら生きてきました。
これは、バプテスマを受けるよう脅迫した司会者から研究や伝道の度に
「滅ぼされるわよ」と言われ続けたためかと思われます。
村本さんご指摘の通り、書籍や雑誌の滅びの様子は目を覆うようなものも
ありますし。
その恐怖から抜けられたのは、とある現役2世の方のサイトを拝見したのが
きっかけでした。

それが今年(2003年)の2月ごろのことです。
何かがすーっと溶けて行きました。
それからこちらをはじめ、いくつかのエホバの証人系のウェブサイトを
見るようになり、どんどん恐怖がなくなっていくのを感じました。
心の中で、すでに私の答えは出ていました。
「この組織にはもうついて行けない」
私にとってエホバの証人系のサイトを訪問することは、
その答えの確認作業でした。

日本では今年の4月に統一地方選がありました。
早速行ってきました。
なんのためらいも、良心のとがめも感じずに。
そして今ではハルマゲドンの恐怖からも解放されました。

情報統制がどれほど信者の心を縛っていたか。
私が苦しんだ年月を返せ、何度も思いました。
鬱病がひどく、数年を寝たきりのような状態で過ごしたために
女性として最も楽しい時期を失ってしまいました。

2世の方々はムチなどという形で虐待を親から受けたという方が
多いですね。
私は1世ですが、被虐待児として育ちました。
家族愛が欲しくてカルトに惹かれてしまったのです。
疑問を感じていたのに、どうして早くにものみの塔から離れなかったのかと
不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
落ちこぼれの私でも、居場所があるような気がしたのです。
特に研究生の立場であれば、内部のことはなかなかわかりません。
当時はネットもありませんでしたし、証人たちの中には本当に
いい方々もおられたことは事実です。
擬似家族から追い出されたくなかった、そんな甘えがあったのです。
しかし、浸礼を受けると、そこでもゴミくず扱いされ、
どこにも行く場所がありません。
現在も仕事に復帰することはできない状態です。

自分がどうしてあの時、同級生の言葉に耳を傾けてしまったのか
後悔の気持ちでいっぱいです。

現在でも精神科の治療と、カウンセリングを受けています。
今年になってから、メジャートランキライザーが処方から完全に外れました。
抗うつ剤では私の不安や恐怖の状態を抑えられないからと、
オランザピン(製品名ジプレキサ)が処方に入っていたのです。
ちょうどネットでエホバの証人についての情報を取り入れたり、
掲示板やメールで交流するようになった頃から、
メジャーは少しずつ減らしていこうという指示が医者から出たのです。
(主治医には宗教的背景のことは言っておりません)
現在、メジャートランキライザーは全く処方されていません。
ただし、パニック障害を併発してしまったので、そちらのお薬は
まだいただいています(頓服としてアルプラゾラム)

もし、あの時聞かなければ。
何度後悔したことでしょう。
けれども、同じように傷ついていらっしゃる1世の方々と
ネットを通じて知り合うことができました。
一般のお友だちとも少しずつ交流しています。
間違った選択をした私ですが、これからは普通の幸せを感じながら
生きていけたらと思っております。
そして、このようなサイトを開き、運営なさっていることに
心から感謝いたします。

乱文失礼いたしました。

《編集者より》
インターネットがきっかで、組織を離れる決意がついたことは、このサイトをはじめ、多くのエホバの証人に向けたサイトの重要さを裏付けていると思います。苦渋に満ちた体験を公表していただきありがとうございました。このようなことを書いて公表すること自体、ストレスが多いことと思いますが、あなたももしかしたら気がついたかもしれませんが、胸にたまったものをこのような形で吐き出すと、その後で心の整理がつき、新しい一歩が踏み出せるものです。それは他の元証人の方々の証言にもある通りです。もう過去のことは整理して、「あの時あれをしなかったら」と過去にこだわるのはやめて、前を向いて将来を見ていきましょう。薬の内容から見るとあなたの病気も徐々に回復しているようですので、今後も少しずつ一般の人や元証人と交流を続けながら、心のリハビリをはかっていくことをお勧めします。


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