「ごめんね守ってあげられなくて」−遠く離れて住む息子のために

(1-19-03)

ごめんね守ってあげられなくて

 お母さんはずっと後悔しています。きみを守ってあげられなかった事。「お誕生日」「ク
リスマス」「学級委員」etc。きみはいつも我慢していたよね。でも、一言も愚痴をこぼさな
かった。
 鞭でお尻をたたかれる時も、きみは一度だって、暴れたり、逃げ回ったりした事は無か
った。いつも自分を抑え、我慢していた。
 今は遠く離れて住んでるきみに、あの時、こうすればよかったと思うお母さんの心の痛
みを伝えます。

「お誕生日」
 クラスメイトに誕生会の招待を受け、喜んで帰ってきたきみ。お母さんは「偉大な教え
てにきき従う」の本を開いて、説教したよね。本当は、なんで、誕生日を祝うのがダメな
のか、お母さんにも解らなかった。だって、どの出版物調べても、どうもつじつまがあわ
ないんだもん。
 「そうだ。お誕生パーティーがダメなら、代りに、メロンパーティーとか、クッキーパ
ーティーとかやろうか!」って、お母さんはきみに言ったよね。きみは凄く喜んで、招待
状を作り始めた。なのに、お母さんは「代りにやるっていうのは、やっぱり良くないよ。
だって、兵役義務を逃れるために、代替作業に就く事さえ、組織は禁止しているんだもん」
と言って、きみをあっさり裏切ってしまった。
 「兵役義務の代りに代替作業に就く事は、個人の良心で決めて良い」なんて、見解が変
わったのは、それから2〜3年後だった。
 お誕生パーティーの代りに、「メロンパーティー」「クッキーパーティー」やっても、そ
れが、たまたま、家族の誰かの誕生日と同じであっても、別にいいのにね。
 ごめんね、ゆう君。裏切ってしまって、ホントにごめんね。

「学級委員」
 きみは昔から友達が多くて、人望があったね。ただ、組織の中ではいつも仲間はずれに
されていた。
 学級委員に推薦されて当選した時も、きみはすぐにお母さんに報告してくれたのに、お
母さんは凄く怒った。お母さんは怖かったの。だって、きみのクラスには、同じ群れの姉
妹の子供が2人もいたんだもん。あの二人の姉妹はいつもきみをライバル視して、ねたみ、
きみが何か失態をやらかさないかと、手ぐすね引いて待っていたから。
 お母さんは、あの二人の姉妹より、ずっと若かったから、いつも、攻撃の矢面に立たさ
れていた。お母さんはきみの気持ちより、自分の防御のほうを優先してしまった。
 「学校とエホバの証人」のブロシュアーを開いて、一緒に読んだよね。「選挙に参加する
事」は「政治に参加する事」で、「投票で選ばれる学級委員も同じ」だって。
 でも、担先生は「じゃあ、先生がきみを任命するならいいよね」と言ってくれたのに、
お母さんは先生に電話して証言していた。
 でもね、お母さんも自分で話してて、凄く変だと思ってた。「任命さてもやるな!」と書
いてあるブロシュアーには、その理由が全く載っていないんだもん。
 「選挙に参加するのは個人の良心で決めて良い」と見解が変わったのは、それから、4
年後だった。
 
 ごめんね、ゆう君。組織の為にきみを裏切ったお母さんは、いつも組織に裏切られてい
る。馬鹿な親で、ごめんね。
 今は足を洗ってカタギに戻ったから、これからは何年かけてもきみに償うつもりです。
 ほんとうにごめんね。
 どうか、いつまでも、優しいきみでいてください。

                               BY お母さん

《編集者より》
心暖まる、しかし非常に悲しい手紙だと思います。これを読むと、エホバの証人は被害者であると同時に加害者であるという実感を新たにします。もう一つの重要な点は、組織が子供に対して計り知れない犠牲を強いることでしょう。エホバの証人の二世の中に、本当の「被害者」が無数にいることを忘れてはなりませんし、そのことをますます社会全体に訴えていく必要があるでしょう。もう一つ興味があることは、あなたがエホバの証人として息子さんや学校の先生にその教えを説明しながら、その心の底に疑問の芽があったことです。このことは、現在組織に忠実なエホバの証人の中にも必ずそのような「芽」を心の奥底に秘めている人がいることを示唆しています。人々がそのような「芽」を大事にし育てることを希望しています。