「抜け出せない恐怖を私なりに分析すると」―フリーダムより

(12-3-02)


間違っているとわかりながら、あるいは組織にある程度疑問を持っているのに抜け出
せない、あるいはその気力さえもがすぐに消えてしまう。
エホバの証人の心理には組織から抜け出すことの出来ない恐怖が、何重もの呪縛と
なって心の中に植えつけられてしまっていると私は考えます。

それは  1 やめるための情報を与えさせないための背教者に対する恐怖
       2  組織によってあまりにもリアルに描き出されるサタン悪魔の恐怖
       3 完全依存型へ刷り込まれてしまうことからの恐怖
       4  組織の外の世界への恐怖
       5 ハルマゲドン、世の終わりの恐怖

       
以上の五つの点に分けてみました。
       
やめるための情報を与えさせないための背教者に対する恐怖

組織は絶えずこの組織に対する批判的な情報を内部の信者に触れさせないように躍起
になります。当然このような情報の発信者とは組織に疑問を持って止めた人たちで
す。そして組織はそのようなやめていった人たちを「背教者」という独特の名称で呼
び、この背教者に対して内部の信者に恐怖心を植えつけるのです。たとえば内部の信
者が日ごろスーパーで買い物をしているときに組織からやめていった元信者たちを見
つけると、けげんそうな目で見たり、まるで犯罪者扱いのような態度でそそくさと立
ち去ってしまうのは、組織がやめていった人たちが自分たちにとってどれほど危険な
存在なのかを日ごろ出版物や王国宣教などで頻繁に取り上げて、やめていった人たち
に対する恐怖心を植え込んでいるからです。組織は「その人がなぜ、どんな理由でや
めていったのか」という情報を極力内部の信者たちに知らせたくないのです。当然の
ことながらある人に対する断絶、あるいは排斥の発表が会衆内であるときに、会衆は
その人が断絶した、あるいは排斥されたという簡単な発表をするだけで、なぜその人
がやめていくのか、あるいは排斥されるのかという理由は発表されません。たとえば
クリスチャンであれば当然あるはずの愛が会衆内に無いのではないかと感じはじめ本
当にこの組織は愛のある組織といえるのだろうかと疑問を持ち始めた人に組織は、愛
が無いと結論付けて辞めていった人と会って具体的な理由を知ってもらっては困るの
です。それはやめるための情報を本人に与えてしまうきっかけとなるからです。パソ
コンが普及してインターネットがどこの家庭でも利用できる時代になると、組織はや
はりそのインターネットの中にある組織に対する批判的な情報に極力触れさせないよ
うにして、躍起になります。しかしインターネットの中にそのような組織に対する批
判的な情報があるのでインターネットを利用しないようにというような直接の説明は
しません。それはかえってそのような情報があることを内部の人に知らせることにな
るからです。インターネットに対する恐怖心をどのように内部の信者に植え付けるの
か、それは背教者に対する恐怖心と同じ方法です。たとえばインターネットの中にど
れほど不道徳な情報があふれているのかを強調し、またその結果クリスチャンの若者
がインターネットによって影響を受け、どのような霊的破滅を経験せざるを得なかっ
たのかというような記事を出版物の中に掲載したり、インターネットそのものがどれ
ほど悪霊の影響を受けているかというような記事を載せます。このような記事は信者
がインターネットを見ていること、パソコンそのものを持っていることすら内緒にし
仲間の信者に堂々と言えないような状況にまでインターネットに対するイメージを悪
いものとしてしまっています。組織が一番恐れているのは不道徳な影響を受けること
などではなく、この村本さんの開いているサイトに信者が触れてしまうことです。

組織によってあまりにもリアルに描き出されるサタン悪魔の恐怖

興味深いことに組織はエホバの証人信者になろうとする研究生の早い段階でこの悪魔
サタンのことを強調し取り上げます。それは研究生にとって良いもの貴重なもの幸福
を奪う存在であり、そのためサタンはてぐすねを引いていつでも自分を付け狙い自分
のすぐ近くにいる存在となります。この悪魔サタンを研究生が出来るだけ早い段階
で、どれだけ怖く、リアルに自分の心に思い描かせることが出来るかによって、研究
生は学び続けることの動機付けを得、学ぶことをやめてしまうことへの恐怖感を抱く
ようになるのです。聖書の中にはサタンが登場してくる回数は非常に少ないのに、協
会の出版物の中ではこのサタンが頻繁に取り上げられ、サタンに関する挿絵の描写は
サタンがおどろおどろしいまでに描き出されています。信者は自分の信じるエホバ神
と同じように絶えずこのサタンを生活の中で強く意識していかなくてはならなくなる
のです。そして仮に組織に対する不信、疑念、仲間のうちで生じるトラブル、自分の
生活の中での問題もすべてサタンが関係していると、そうそれはサタンが自分を組織
から引き離そう、やめさせようとしているからだと結論付けてしまうようになるので
す。そして前述で取り上げた組織に対する批判的な情報もサタンが背後にいるのであ
り、それらの背教者、インターネットのサイトの批判的な情報発信者にもサタンが絡
んでいるとすぐに関連付けるのです。例えば信者がこの村本さんのサイト「エホバの
証人情報センター」に仮に偶然たどり着いたとしても、背教者に対する恐怖、サタン
悪魔に対する恐怖が染み付いている信者であるならばすぐにこのサイトがエホバの証
人に関する批判的な情報も提供していることを知ると、それはとても敏感な自動セン
サーでも心の中に入っているかのようにパソコンのスイッチをすぐに切ることになる
でしょう。確かに聖書の中にはサタンに注意し、警戒を働かせるよう述べている箇所
があります。しかし組織はこのサタン悪魔をあまりにも強調しすぎる傾向がありま
す。その結果極端な例かもしれませんが私の知り合いだった一人の兄弟は東京ディズ
ニーランドに行くことすら躊躇しました。なぜなら、そこにはサタンの霊が感じられ
るからというのです。親は自分の子供が外で遊びに行くような年齢になれば、車に気
をつけるよう、交通事故にあわないよう教え諭すはずです。しかしあまりにもリアル
な事故の映像や写真を見せたりはしません。親が事故に対する恐怖心を抱かせるよう
なことをひっきりなしに言うとしたら、子供はもう車が走るだけでおびえ外に出かけ
て遊ぶ勇気もなくなってしまうでしょう。エホバの証人でなくても一般社会では誠実
そうに思える、善い人たちがたくさんいます。ではそのような人たちとなら交流を
持って親しくなることはかまわないのではないでしょうか。いいえそれは危険です。
なぜならサタンはそのように一見よさそうに見える人たちであったとしても、その人
を通して悪い影響を及ぼそうとしているのです。そんな教えがあるおかげでエホバの
証人は以前付き合っていた友達を捨ててゆき、
親はエホバの証人以外の友達と自分の子供を遊ばせません。

完全依存型へ刷り込まれてしまうことからの恐怖

私がまだ現役証人だった頃、巡回訪問の際の会話を今でも覚えています。私が巡回監
督に「兄弟、霊的に進歩するに大切なものは何でしょうか」と質問すると監督は「そ
れは謙遜さと従順という特質です。」と返ってきました。さらに会話はベテルでの話
題に移ってゆき、「兄弟たちがもし電信柱を地面に反対に打ち込むよう指示されたな
ら,兄弟たちはどうしますか」すかざす、「ベテルではそのような指示の場合でも兄
弟たちは何の疑問を持つことすらなく、そのとおりにするのですよ。」との話。当時
は何の違和感も無くこの会話を聞いていたものでした。協会の出版物は徹底して組織
に対する従順を繰り返し繰り返し取り上げます。家族生活に関する記事であったりす
るときも、子供の親に対する従順の大切さ、妻であれば夫に対して頭の権の原則を当
てはめた従順の大切さが強調され、そして必ず最後に来るのが家族の組織に対しての
従順の大切さです。組織が提案する以外の事を行うことは危険であり、それを頭の中
で思い巡らすことすらいけないことなのです。組織のいうことに疑いを持つことは危
険であり、それはエホバの証人の中で特殊用語として出てくる、「独立の精神」とい
う用語でその危険性が絶えず強調されます。そうなると証人の一人一人は自分という
意思が必要なくなってくるので、ただの指示待ち状態、いつも組織のいうことだけに
なんら疑いを持つことなく従っていく「完全依存型人間」へと人格が改造されてしま
うのです。自分で考えて、自分の判断で、自分の出した結論で、行動するということ
がいけないこと、それは「独立の精神」を生んだサタンの取った行動と同じだという
のです。どんな本を読むのか、どんな人たちと自分は気が合うのか、友達になりたい
のか、どんな音楽を聴けばいいのか、どんな子供の育て方をすればよいのか、生活の
ありとあらゆることが自分の判断がつかず、いつも不安に駆られ、組織のいうことだ
けに無条件で信頼を寄せることになってゆくのです。これはとくに組織の中の先遣部
隊ともいうべき組織の中枢を担うベテル奉仕者、あるいはギレアデ宣教学校を卒業し
て世界各地へ飛ばされてゆく宣教者たち、特別開拓者、巡回監督たちはこの傾向が強
くなってゆきます。経済的にも百パーセント組織の世話になっていることに加え、彼
らは自分たちがいつどこへ飛ばされるのか、突然来る任命地の変更に不安を抱きなが
ら生活しています。彼らに安住の地を与えることを組織は許しません。それが更なる
組織に対する「完全依存型」の傾向を強めるという効果を理解しているからです。組
織のリーダーたちがある意味で模範的な「完全依存型」になることによって、その下
の長老からはじめ末端の者までもがそれをお手本にして完全依存型を受け入れていっ
てしまうのです。組織が提供する情報は百パーセント信じきっていますから、組織が
間違うことなど考えるだけで恐ろしくなくなってしまうのです。

組織の外の世界に対する恐怖

協会の出版物の中に頻繁に登場してくる世界中で起きている悲惨な場面の絵や写真が
あります。飢餓で苦しむやせた子供たち、戦争で焼け出された家族、核戦争への恐
怖、水質汚染、などなど目を背けたくなるようなものを多く載せます。聖書予言の成
就だから載せる場合もありますが、それだけではないことは明らかです。それは組織
の一人一人のメンバーに組織の外の世界に対する徹底的なマイナスのイメージ、恐怖
心を吹き込むことにあるのです。エホバの証人と接する以前は本人はさほど世の中の
周囲に対して神経質でも無く、悪いイメージを持って生活してきたわけではないの
に、証人になると世の中に対する見方が極端に変わってきます。殺人事件のニュース
が流れるとすぐにそれを終わりの日の予言の成就と関連付け、家庭で子供がいじめの
話題をしだすとすぐにそこにはサタンが働いているからと子供に話し出す、政治、経
済、宗教にとどれもサタンが関連して世界中で事件事故を起こしていると結び付けて
考えるようになります。それに比べて組織の内部は霊的楽園なのでそのような心配は
ぜんぜん要らないすばらしいところだと教え込まされます。これは一般的に「コント
ラスト効果」と呼ばれている人間の心理を利用しているように思えます。家庭用浄水
器のセールスマンは水道水から流れてくる水がどれほど危険で汚いものかを印象付け
ようとします。工場から垂れ流されるどす黒い汚水が川に流されている写真を見せた
り、あまりの汚さで魚が川に死んで浮いている写真を見せるかもしれません。布団洗
いのセールスマンは実際に顕微鏡や掃除機を持ち歩き,その家庭の布団が実際どれだ
けノミやダニがその布団の中にいるのかを実際に見せたりします。そうすることに
よって売りたい商品がどれだけすばらしいものなのか、見せかける効果があることを
知っているからです。組織がよくパンフレットや出版物に世界中で起きている悲惨な
場面の絵や写真のすぐ隣に楽園の挿絵や楽園を想像させる美しい自然界の写真を載せ
るのはこの「コントラス効果」のいい例です。

ハルマゲドン、世の終わりの恐怖

組織は今まで、この終わりの日に対する警戒心を絶えず強調してきました。それは内
部の緊迫感を高め、組織の更なる一致をもたらし信者が更なる布教活動に携わる原動
力になっていくからです。その「預言の理解」という教えの時限爆弾の爆発予定時間
はいつも信者にとって数分後のように感じさせる必要があるため、組織はいつもその
時限爆弾の予定時間を変えていかなくてはなりません。最近「世代」の預言が変更、
もしくは廃止されたため、組織は新たな預言の解釈を信者の前に用意することでしょ
う。というのは、今までの組織の教えの歴史から見て推測されるからです。カチ、カ
チ、カチと信者の心の中でそれは絶えずリアルに響いていなくては困るのです。

証人が組織を去るとき、正当な理由は存在しないのです。組織を去ることはすべて自
分の落ち度であり、弱さであり、努力の無さ、利己的な傾向ゆえなのだという事をい
やというほど感じさせるよう組織は強調します。そして何よりもそれは自分の信仰の
対象である神エホバを裏切ることになるということです。

相手の手の内を知るとは自分にとって有利になります。相手のどのような近づき方を
知ることによって、また、近づき方をしてきたのかを知ることによって、今度はそれ
をやめる時、やめ易くなるからです。私が組織をやめたとき、このような情報がとて
も必要でした。私は今年の八月にこの村本さんのホームページに投稿させていただい
た、ペンネーム「フリーダム」ですが、この組織を去る上で本当に勇気が必要でし
た。組織におかしいなぁと思う疑問があってもそれは絶えずかき消され、悶々と時間
だけが過ぎていくのです。単なる一個人の経験だけで、上記のエホバの証人が抱く
「恐怖感」というものを自分なりに分析してみたのですが、もしかすると間違ってい
る箇所もあるかもしれません。何なりと意見をそのときは寄せてください。この投稿
を読んで、少なくても自分がやめられないで迷っている原因を一人の人でも理解して
もらえて、役立つなら幸いです。

メールアドレス pfreedom@nifty.com 


《編集者より》
非常に的を得た指摘であり、エホバの証人の実態をよく把握していると思います。そして全ての恐怖を裏打ちしているのは結局「エホバ」と「聖書」の権威であり、その裏打ちがある以上、どんなに馬鹿げた恐怖でも、ゆるぎない信念になるのでしょう。それに対し、これらの「真理」も恐怖も、全てものみの塔協会の指導部によって人為的に作られた「人」の問題であることが見えてくれば、このような「呪縛」も解ける時が来るのでしょう。メールアドレスを公開していますので、質問や意見を直接投稿者に送って下さい。


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