「彼の国とJW」−拉致被害者とエホバの証人の比較

(10-24-02)

 帰国直後は固い表情を見せていた拉致被害者の方々も、ふるさとでは日に日に和やか
さを取り戻し、あらためて家族の絆の大切さを教えてくれました。連日の報道に触れる
たびに、私は思わず彼(か)の国と、JWの世界を重ね合わせてしまいました。かって
周囲の反対を押し切って、祖国に戻る夫に付き従った日本人妻が多数いました。その後
消息を断った人もいます。その中には、一部の人たちが彼の国を「地上の楽園」と称し
て褒めそやしたことに、影響された人もいるでしょう。情報が偏重していたのです。 
 ではもひとつの楽園、「霊的パラダイス」を自称するJWはどうでしょうか。彼らは
決して拉致はしません。頻繁に家を訪れて伝道するだけです。ごく一部の人は、周囲の
反対を押し切ってでも入信します。そして彼の国も顔負けの厳しい生活条件(集会、伝
道、戒律)を課されて、疲弊していきます。大学進学を諦め、仕事を二の次にして、年
金にも加入せず、輸血を拒否して、組織に翻弄され続けます。(現在は一部改善されて
いる)。
 テレビで見る限り、彼の国の市民は非常に幸福そうです。特にマスゲームは圧巻で、
感動さえ覚えます。集会での証人たちも幸福そうです。そしてともに、偶像化された絶
対的権力者(JWの場合は統治体や、虚像として作り上げた神であるエホバ)を全員で
崇拝します。ある教授が、帰国された拉致被害者の方々を見て、必ずしもマインドコン
トロールされているのではなく、その振りをしている人もいるのではないかと解説して
いました。JWも同じです。信じている人も、信じている振りをしている人もいます。
 もうひとつ見事に共通している点は、情報の遮断です。東欧の体制を崩壊に招いた要
因に、西側からの電波による情報が挙げられます。彼の国の指導者はある意味で頭脳明
晰で、自国のテレビやラジオのチューナーでは、外国の電波を受信できないようにして
いると聞きました。まさにJWの生命線もここにあります。証人がネットや書籍などを
自由に見ることができるなら、きっと崩壊が始まるでしょう。
 JWは拉致はしないと断言できます。熱心に勧誘するだけです。しかし家族の一員が
JWに入信した場合、他の家族は、たいがい憤りを覚えるのではないでしょうか。肉体
的拉致ではないが、精神的拉致と感じるでしょう。たとえ面影は同じでも、心を組織に
奪われてしまうからです。私は個々の証人を責めるつもりはまったくありません。交じ
わっていた会衆の人々は、今でも大好きですし、よい思い出となっています。
 今回帰国されたHさんは、友人から永住帰国を強く迫られたとき、「俺の24年を無
駄だと言うのか」と声を荒げたそうです。長年JWの世界で生きてきた証人たちも、同
じ思いがあるかもしれません。そこには仲間がいて、地位があり、思い出があり、人に
よっては家族がいます。過ちに気付いたとしても、「JWで過ごした長い年月を、無駄
だった言うのか」と叫びたくなるでしょう。簡単に割り切れるものではなく、それほど
JWの影響は根深いのです。                          
 先日スーパーで、ある姉妹に声をかけられました。ベテル出身で、聞き惚れてしまう
ような奥深い注解をする、美しい女性です。本間年雄氏の排斥について尋ねると、彼の
人となりを知っているようで、短いコメントをいただきました。私がなによりも悲しい
のは、JWの宿命的な矛盾です。この姉妹のように純粋で従順な証人ほど、新しい人を
組織に取り込んでしまうということです。真心のこもった証言に、人はほだされてしま
うのです。そして結果的に罪深くなるのです。すべてを犠牲にして神に仕えようとする
ひた向きさが、新たな悲劇をもたらすのです。
 惜しみなく労力を費やして、このHPを運営してくださいます村本様には頭が下がり
ます。そして厚くお礼を申し上げます。情報の提供が、証人とその家族の不幸に終止符
を打つ、最も有効な手段になると思います。これらのHPを見て、JWを離れる決心を
した人が多数いるはずです。あるいは組織を離れた後に、このHPに出会い、傷心を癒
された人もいるでしょう。それら証人を迎え入れる家族は、拉致被害者を20数年ぶり
に胸に抱き締めた家族と、同じ思いを抱くかもしれません。証人の側もきっと、万感胸
に迫るものがあるでしょう。そのときようやく、家族の絆の大切さを知ることができる
のです。
                      会衆の人たちが大好きな、元研究生

《編集者より》
私も北朝鮮からの帰国者の見方考え方と、エホバの証人のそれとは非常に似たところがあると前から思っていました。数年前に一時帰国した女性たちも同じような言動を示していたと思います。あなたが書かれたような幾つかの要因が、エホバの証人の社会と北朝鮮の社会とを非常に似たようなものにしているのでしょう。いずれの場合も、指導者となった人間たちが、自分たちは人間以上の特別の権威を持つという妄想に凝り固まった時(ものみの塔は「エホバの組織」、北朝鮮は「理想的社会主義国家」)、その人間たちの不始末を押し隠して粉飾するための、様々な演出と人心の操作が行なわれるのです。これがものみの塔と北朝鮮の共通の基盤だろうと私は思います。