カルトについて <4> (七転八起)

(2-9-01)

2月6日のカルトについて<3>のつづきです。

なぜ、続いて投稿したかというと、皆さんの投書を読ませていただいて、「エホバの
証人」の組織がカルトであるという認識が薄いように感じたからです。カルトには長
く居続けるほど、社会への復帰が困難になるという危機感を持っていない方が多いよ
うです。勿論、家族や仕事や友人などの要素によって、すぐに行動に移せるわけでは
ないのですが、離れる準備をしていくのと、しないのとでは大きく異なってくるから
です。カルトは仮想の世界を提供してはくれますが、それは現実とはかけ離れていま
す。

「カルトか宗教か」  竹下節子著  文春新書  からの抜粋

第4章  カルトの見分けかた

*人がカルトから離れるとき

  カルト・グループに全存在を預けていた人がそこを離れるのは非常に難しい。カル
ト・グループの作り上げた人工的な世界の外に、リアリティーは存在しなくなってい
る。
  だから、カルトから離れる時の現実の困難は、物理的な困難ではなく心理的な依存
状態から脱する困難だろう。カルトはさまざまな心理操作によってメンバーの周りに
まったく別の疑似人生を築いてしまっている。
  グループはメンバーにすべてを提供する。人生の「意味」や「目的」、使命、仕
事、尊重するべきヒエラルキー(ピラミッド型の階級制度)、より良き段階に導く通
過儀礼や研修、改心させるべき又は戦うべき外部の敵。内部の友情、身体的精神的な
エクササイズ(訓練)、外部の他者に対する優越感、使徒たることの徳。外部のもの
や出来事を侮蔑するように仕向けられ、内部の論理から外れることに対して罪悪感を
養う。メンバーに人生のすべてを与えたリーダーを批判することは恩知らずの罪深い
行為になる。
  だから、このようなグループから離脱することは、世界全部を失うに等しい。頼り
にしていた価値規範がすべてなくなる。グループに入る前にもっていた規範とは縁が
切れているし、実社会をありのままに見てみると、現実は実に多様で複雑なものだ。
カルトによって与えられていた、安全で確かな行動様式だけではとても対処できな
い。
  多くの現実を前にして、自分の頭で考えて吟味し、自分で責任を持って選択する、
ものごとに優先順位をつけていくなどという考えは、カルトによって脆弱にされた自
我には厳しすぎるものだ。

  だから、カルト・グループに「はまった」人が、自由意志によって出て行くのは非
常にまれだ。かといって、外部の家族などにより説得されて出て行くことも、勿論少
ない。カルトだけがリアリティになっているし、カルトの内部で、外部からの迫害幻
想などを植え付けられているから、カルト批判は逆効果になることの方が多い。
  カルトの離脱のきっかけを作るのは、疲労や倦怠、あるいは受け入れがたい事実を
発見しての反抗、新メンバー獲得のために接触した外部の異性との恋愛関係などが考
えられる。
また個人の嗜好がどうしてもグループの原則と相いれなくなった場合もある。そんな
時には突如として、外部の世界に目が開かれて、グループからの離脱を決心すること
がある。しかし、すべてが簡単に過去のものとなるわけではない。  ・・・ここでエ
ホバの証人の例えが出てきますが、あまり現実的ではないので省略します・・・

  家族ぐるみではなく自分だけ、あるカルトに「はまった」後で元の世界に戻ったと
いう場合でも、カルトによって金銭的、知的、情緒的、時としては性的にも搾取され
利用され尽くされたので、「人生を奪われた」という被害意識が深刻な後遺症を残す
元メンバーもいる。
  彼らを現実に再適応させるには、根気よくリハビリを続ける必要がある。適応だけ
でなく、新しい住居、仕事、人間関係などを探す手伝いをするのもいい。
  長い間拘置されていた人が「娑婆に戻る」時の難しさと同じものがある。「自由に
生きる」のを学び直すのは、長く苦しい道程なのだ。中にはその現実に耐え兼ねてグ
ループに復帰する場合さえある。家族や支援団体は、絆を断たずに辛抱強く見守る必
要があるだろう。The end.

このように実社会に復帰するのには大きな困難が付きものです。私自身は社会との交
友がずっとあったので比較的スムーズでしたが、ある方は2年ほど準備期間を設けて
出て来たのですが、被害意識と価値観の喪失に悩み、精神が不安定でした。
自分がカルトの中にいた時には気づかない特異性が、社会と接触して始めて、いかに
大きいものかがわかります。温室で育った植物が風雨にさらされる外に置かれた状態
を想像してください。最初は大変ですが、それを乗り切る勇気をもたなければ、いつ
までたてもカルトの温室に入っていることになりませんか?少しずつ、社会との接点
を増やしていく作戦を自分で考えて実行されるようお勧めします。

《編集者より》
この本はカルト一般について書かれているようですが、離脱に伴う困難と対応の仕方は、そのまま元エホバの証人の状況に当てはまるものと思います。確かに、精神的にも時間や活動の面でも、少しずつ組織からの独立を確立し、温室から外部の現実社会への段階的移行を計画することは重要であると思います。興味深い資料をありがとうございました。