二世の若い方々へ自立についてのメッセージ(七転八起)

(12-14-00)

私は今、中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」という曲のCDを聞きながら
メールを書いています。この曲はNHKの「プロジェクトX」という番組(火曜 夜 9:
15〜10:00  チャレンジ精神にとんで人生を歩んできた人達の体験が見れるの
で、一度ご覧になってみてください)のエンディングテーマ曲です。その歌詞の一部
を抜粋してみました。

行く先を照らすのは
まだ咲かぬ見果てぬ夢
遥か後ろを照らすのは
あどけない夢
ヘッドライト・テールライト  旅はまだ終らない
ヘッドライト・テールライト  旅はまだ終らない

この歌詞は人生が旅のようで夢と希望に満ちて歩んでいく姿を描いているように感じ
ます。でも、いつも平らな人生行路ではないことを 「足跡は 降る雨と 降る時の中
へ消えて」 という歌詞から感じとれます。人生は山あり谷ありで、自分の足で歩く
からこそ満足感が得られるのです。

若い人達は多くの可能性を秘めています。ところが、証人二世の若者たちは、組織や
親が敷いたレールの上を歩いているだけの人生になっています。
組織を離れたい二世の方々の親との葛藤がいかに苦しいものであるかを、ある程度推
測できます。私は家族の中で一番先に組織を離れる決意をしたので、後に続く子供達
は道が開けていますが、もし順番が逆であったら、子供達は大変なストレスを抱える
であろうと思います。
私は物事を徹底的にする方ですから、子供が先に組織を離れていたなら、まず経済的
な援助をしなくなると思います。今はわずかな食費を入れるだけで、食事、光熱費、
電話、インターネット、車など自由に使っている子供にとって、痛い仕打ちになるこ
とでしょう。

証人の皆さんは、個々に家庭の状況が違いますので、それぞれに合った対処の仕方が
必要になるのでしょうが、まず精神的に自立することが大切ではないか・・・と考え
ます。その点で助けになりそうなエッセーを斎藤茂太さんの「気持ちの整理の上手い
人 下手な人」(新講社)の本から抜粋してみます。

あなたは、 「サーカスの象」 になっていないか

 サーカスの象は、小さい頃に、頑丈な鎖でつながれる。子象は鎖をひっぱって逃げ
ようとするが、まだ小さいので鎖は切れない。そのうち、逃げられないと観念して暴
れるのをやめてしまう。
 さて、この子象は年月がたつうちに大人になる。もう、つながれている鎖など簡単
に切れるパワーを身につける。ところが、象は決して鎖を切って逃げようとはしな
い。象は、鎖が切れなかった経験はしているが、鎖を切れた経験はしていない。「鎖
は切れない」という観念が植え付けられているのである。
 人間も、この象と同じだ。一度、失敗したことを「これは自分にはできないことな
のだ」と思い込む。「苦手意識」を自分で植え付けてしまう。そして、二度と同じこ
とに挑戦しようとしなくなる。
 しかし、考えてみてほしい。人間も、子象と同じで、日々成長しているのである。
子供の頃やってみてできなかったことでも、今やったら簡単にできることなど、たく
さんあるはずなのだ。いつまでも、「これはダメだ。」と思っていたら、本当にいつ
までもできるようにはならない。「そこまで」である。
 しかし、何度でも挑戦すれば、少しずつでも状況は変わってくる。ダメだと思って
いたことが、あまりにすんなりできてびっくりすることもあるだろう。今までのコン
プレックスが、突然、自信に変わることもあるはずだ。ぜひ、懲りずに挑戦してほし
い。
 弟の作家・北杜夫が、こんな話を書いている。まだ、小説家としてデビューする前
に自費出版した「幽霊」を、母が岩波書店に見せにいった。ところが、その編集者
に、「優等生の作文で、どこといってとりえがない」とつき返された。母は、「もう
小説なんか書くのはやめなさい」と忠告した。しかし弟はあきらめなかった。弟に
は、どんな優秀な編集者だって、いい悪いという判断は、あとになってみなければわ
からないという自信があったという。
 結局、弟が信じたとおり、この本は別の編集者の目にとまって評価を得た。そして
彼は小説家への道を歩み始めたのである。
 今、うまくいかなくても、マイナスの結論を出す必要はない。できることをまず
やって、できなかったことの評価は保留にしておこう。そのうちに、保留にしておい
たことを、もう一度やってみよう。いい評価をたくさんためていけば、苦手なことに
挑戦する勇気もわいてくるであろう。

the end
茂太さんの提案のように、あきらめずに挑戦するという気持ちは大切ですが、今すぐ
に実行に移せるかどうかは、個人の状況によって違うので、人によっては長期戦を構えるのが得策かと思
います。例えば、この体制はまだ続くと思われるので、生活の備えのために何か資格
を身につけるのも一つの方法です。そのための学校に通えば、前向きな人々と友達に
なれて、プラス思考を身につけるのに役立ちます。世間のものの見方を知るのは大切
なことです。それによって、自分が閉鎖的な組織の中で、いかに思考がゆがめられて
いるのかに気づくことでしょう。まず、精神的に自立して、経済的に自立する方法を
見出していくことと平行して、だんだんと組織から離れるように集会・奉仕の頻度を
減らしていくという二本立ての準備をなさるようお勧めします。人によっては何年も
かかるかもしれません。私も2年ほど準備期間を設けてきました。たとえ長期化した
としても、サーカスの子象のままでいることにはならないでしょうから、チャレンジ
してみてください。

《編集者より》
毎回的を得た助言を頂き感謝いたします。あなたの別のメールには日本の経済的な困難がエホバの証人を含めた日本の若者の生活に影響を与えていることが書かれています。日本の不況は社会全体の希望を減少させ、厭世観や犯罪を助長しているのかもしれません。このような世界は確かに元エホバの証人にとって特に困難かもしれません。安定した職を得て経済的な自立をはかることの困難を察することができます。もしかしたら、そのような人々は現実社会の困難から、再び「楽園神話」のものみの塔の鎖に戻ることを考えるかもしれません。しかし歴史的に見て、景気も社会の希望も、戦争も平和も、地震や自然災害も、波を持って繰り返します。悪い時代の後には必ずよい時代が来ます。もちろんよい時代に安住していると必ずまた悪い時代も来ます。七転八起さんも経験しているかもしれませんが、ベトナム戦争の1960年代、1970年代には多くの人がこんなひどい世界はもう懲り懲りと感じたものです。私の住むすぐ近くにはセントヘレナ山という1980年に大爆発を起こした火山があります。その火山の北側数十キロの範囲は広島の原爆直後のような灰色の死の世界でした。人も建物も植物も動物もすべては絶滅され、確かに「全ては終わりだ」とため息をつく気持ちになりました。しかし、昨年ハイキングに行った時には、その灰色の死の世界は、色とりどりの高山植物に覆われ、野生動植物の宝庫となり、新しくできた火山湖にはどうやって生き延びたのか、魚までいました。確かに終わりと思われたものが、実は始まりだったのです。どうか目先の悲観的ムードや楽観的ムードに惑わされず、希望を持ち続けて将来の生活設計を立てられることをお勧めします。