「道とは自分で切り拓くもの」

(11-5-05)

ご多忙の中、先生にいたりましては益々ご清栄のことと存じます。
いつもこちらのサイトを楽しみに見ている一個人です。私がなぜこの様な内容のサイトを
閲覧するようになったかというと、この宗教が起因する家族の分裂問題に頭を悩ませてい
るからです。
私自身、この宗教との関係は実に20年に及びます。現在34になりますが、20歳で自ら組織
を去るまで言わずと知れた二世の立場でありました。母親が入信したのがきっかけであり
まして、それが私がまだ母親のお腹にいた1970年だそうですから、私は産まれた瞬間から
強制的信者であったわけです。
私が経験した内容は敢えて割愛したいと思いますが、(問題はそれではないので)今現在実
家で起きていることをお話しします。
母親は35年に渡り信者でありバプテスマは73年に受けてますから、現在では現存する方が
少なくなったいわゆる75年通過者なのですが、最近進行性のガンにかかっていることが発
覚しました。そうなるとまず騒動になるのは輸血の問題です。
うちは両親と五人の子供(4男1女で私は三男)でしたが、父親だけを除き全員入信していま
した、というかさせられていました。80年代後半にまず次男が去り、続いて四男、長男と
立て続けに去っていきました。特に長男はバプテスマを受けた直後でした。
残ったのは母親と私と妹でした。母親は息子達が離れたショックと更年期障害が絡み精神
的に病んでいきました。
父親は以前から家族を顧みない人間でしたので、特に妹は中学生になる前の思春期でした
から、本音を言えば私もその時点で組織を去りたかったのですが、病的な母のもとでは妹
に全ての圧力が下ると思い、妹のために私はもう少し組織にとどまっておこうと決心しま
した。母が集会を休みがちになり、北海道の寒い冬を妹と二人で歩いて王国会館に通った
のを覚えています。途中泣き出しそうになる妹を強く励まし、俺達は楽園に行くんだから、
と手を握って引いていきました。
今考えたら、その時の行動そのものが裏目に出て、現在の状況を産んでいます。私は失敗
しました。妹を連れて組織を去れば良かったのです。ただ、当時は私も17歳の未成年でし
たので生活力もなく、そういう行動しかできなかったことを後悔します。
やがて長男が家に戻ってきて、また組織に戻りたいという旨の連絡を長老にしていました。
長男はバプテスマを受けていたので組織に戻る際にはいくつかの質問事項があったそうで
すが、(離れていた間に何をしていたか等)結局長老の許可を貰い、また復帰することにな
りました。
それが私が19歳になったときでした。母親の更年期障害も和らぎ、長男が帰ってきたこと
で明るくなりました。会衆のある兄弟からは「T君(私)良く頑張ってお母さんと妹さんを
守ったね。君なら立派な長老兄弟を目指せるよ」と欲しくもない誉め言葉をいただきまし
た。
しかし私はこの時、「やっと肩の荷が降りた、これからは長男にまかせて私は私の道を行
く」と心で決めていました。ただ、法的には子供は20歳になるまでは親の裁量下にありま
すので、私は20歳になるまで真面目に集会には通い、20歳になったのを境にプッツリ関係
を絶ちました。
家族や仲間の信者や長老などから何度も説得を受けましたが、私の気持ちは既に決まって
いる、との返答で二度と彼等と交流をすることはありませんでした。

話をもとに戻します。
私は自分の辞め方は、作為的で背信的であるかもしれないと思っていました。本来なら家
族を説得し、家族ぐるみでの脱会を試みるべきでしたが、狂信的な母親が全ての要でした
ので、組織を去るイコール家族関係を絶つというようなスタンスしか取れませんでした。
妹からしてみたら、あれだけ私を励ましたのに嘘をついた、と思われているのかも知れま
せん。
その事を根に持たれているのでしょうか。
母親が心臓病と糖尿とガンを患っていると聞いて病院に駆け付けましたが、お見舞い金だ
け受け取ると、帰れと言われてしまいました。
今は奉仕の僕の長男にも脱会して欲しい旨の説得をしましたが、話を聞かずに電話を切ら
れてしまい、妹にも同様の話をしたら、私を悪魔の手先みたいなよばわり方で、もはや手
遅れでした。
長男は別として、なぜあの時私は、私も集会に行きたくないと泣いた妹の手を引いて強く
励ましたのか、考えたらとても後悔しました。
妹はこんな性格になり30目前にして結婚相手もいないし、定職にもついていません。
人格は極めて歪み、人を非難する、裁く、にかけては一級品になりました。
統治体の人間を天に行く人だと本気で信じているし、統治体の書物は絶対間違ってはいな
いと主張します。
反面、思春期には(私はエホバの証人だから)クラスの好きな男子に告白できない、と日記
に書いてありましたし、職についてからも職場でエホバの証人であるということで非難さ
れると職を変えて転々としていたみたいです。
うちの妹を見る限り、エホバの証人、特に二世は思春期に学ぶべき大切なこと、社会に出
る前に知っておくべき重要なことをその子から遠ざけさせられることによって、ある意味
従順なエホバの証人になるのかも知れないが、反面、非常に狭く偏った見方しかできない
人間になり、成長の過程で大切な芽をことごとく摘み採られているような気がします。
私はエホバの証人の言うハルマゲドンは現実起こらないと思っています。仮に起きたとし
ても、本来の愛ある神ならば、エホバの証人の組織にいる民を優先などせずに、神ならで
はの人間をも超越した感性により選ばれるのだと思っています。
だから、自分は救われたいから、生き残りたいから、という動機は不純に感じてならず、
当該宗教発祥の国である米国の社会構図そのものに感じます。
アフリカで飢えた子供が何百万といても実際彼等は何かをしたわけでもなく、神が本当に
愛をもって人々を救われるのなら、お金もなく、食べるものもなく、その日を生きていく
のに精一杯で、宗教などやっている余裕がない恵まれない人々が救いの対象から外れ、経
済大国の、家計に余裕があり、未信者の夫が働き妻が宗教活動していても経済的に全く支
障がない、いい暮らしをしている人間が組織にいるというだけの理由で救いの対象になる
というのは全く馬鹿げており、話になりません。こういう腐った宗教は早めに壊滅すべき
に感じます。

長男と妹は、コソコソと話しをし、母親の手術の予定や経過にしても、私には全く知らせ
てくれないし、お前は家族ではないといわんばかりの冷たさです。
宗教とは人々に癒しを与えるものでなければ存在価値すらないのです。本当に悲しくなり
ます。
日本支部に電話をかけ、出た人にうちの状況を話し、輸血はしないが、それによって生じ
るリスクや経済的負担はそちらで負ってくれるのか?と聞いたら、話になりませんねと言
われて電話を切られてしまいました。別な日にもう一度電話して聞いたら「あなたも昔は
信者だったのなら私の説明は要らないと思いますが」とあっさり切り捨てられてしまいま
した。

こういう現状に悩む日々です。私は母親に関しては放っておくつもりです。むしろエホバ
の証人のままで死なせてあげた方が幸せかもしれない。
もしかしたら母親は違和感に気付いているのかもしれない。しかし、今更この宗教は真か?
誤か?を調べる勇気もない。
やはり間違いではない、いや間違いであって欲しくはない、という気持もあるかも知れま
せん。

妹や長男に関しては早く脱会し、人間本来の自由な解放された健康的な生活に勤んでいた
だきたいと思います。
やはり人生を切り拓き、楽しむも苦しむも自分自身の決断です。決断には責任が伴います
がそのくらいは社会人の常識でわかる問題です。
あと30年たってまだハルマゲドンが来ない、どうしたのだろう?今は終りの時ではなかっ
たのか?と悩んでも過ぎた時間は取り返せません。
今熱心なエホバの証人の方がこの文を読む機会があったら、あなたは是非自問自答してく
ださい。

あと何年は大丈夫だって考えてますか?
ハルマゲドンが来なかったら何をしようと思いますか?

長文失礼しました。先生のご健康をお祈り致します。

《編集者より》
エホバの証人の宗教が、夫々の家庭をどのように変えていき、個人の生きかたにどれだけの影響を与えるかは、家庭によって異なりますが、あなたの家庭は、家族全員が夫々にものみの塔の重荷を背負って生きてきた様子がよくわかります。ここでも、この宗教が引き起こす広範で深刻な問題がよく浮き彫りにされていると思います。貴重な経験をお話しいただきありがとうございました。特に、同じ兄弟姉妹でありながら、あなたが簡単に組織から出られたのに、長男と妹の方々が、ますます組織に固くついている事実に興味を持ちました。あなた自身も考えていられるかと思いますが、あなたと他の兄弟姉妹とはどこが違って、このように正反対の道を行くようになったのでしょうか。私にはとても興味がある所です。